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リアリティーは細部に宿る。

 夕べも今朝も頭痛なし。

 実際に夕張に行ったあとで読み返す「旧友は春に帰る」、ものすげえ臨場感である。小さい町のはずなのに、なぜ駅とホテルユーパロの間でいちいち折口さんのタクシーを使うのか、行ってみて両者がだいぶ離れていることがわかったし。逆に、夕張から新夕張まで、<俺>がアンジェラに「二十分以内に着けると思う」と言うところ、折口さんが「十分」と言い切ったのはいくらなんでも無茶であることもわかる、雪道だし。アンジェラのビッグホーンでススキノに戻る道順は作中「道道3号から」「カクタから234に入る」とされているが、途中「坂本九思い出記念館」、(栗山町)「開拓記念館」、(長沼)「分屯基地」近辺を通過していくのがいちいち腑に落ちる。我々も先日、まさにこの道で帰札したので。

 ポール・フィンチ「調教部屋」(ハヤカワ文庫)は秀作である。主人公マーク・ヘッケンバーグ部長刑事のイギリス人ぽくない無茶ぶりがスッとするし、この国の底辺のクズのみなさんの「トレイン・スポッティング」ばりの描写や、ロンドンとマンチェスターの間を行き来する経路など、「リアリティーは細部に宿る」の法則をおろそかにしていない。本作は、現在第5作まで発表されている<ヘック部長刑事シリーズ>の第1作とのことで、邦訳の続刊を大いに期待したいが… それにしても、いくら売るためとはいえ「調教部屋」って。原題は「Stalkers」なんだから、そのまま「ストーカーズ」でいいだろうよ。将来、映画化などの機会に新版を出すときは改題されたし。

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